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2011年04月12日

フランスの開業医の先生のお話です。

「フランスの医療・醫學パート1」

フランスの医師の平均収入は、一般医700万円、専門医900万円で、決して医師にとっていい制度ではないかもしれません。でも、医学教育が安いので問題ないのかもしれません。

専門医はずっと専門医

フランスの医学部はすべて国立であり、授業料もほとんど無料である。卒業時の成績で上位半分は専門医教育に進み、それ以外は一般医教育に進む。専門医は専門以外の医療行為はせず、一般医はちゃんと一般医として働くための3年間の教育を受ける。開業医の患者でも検査の処方箋を持って独立の検査施設や大病院の検査部にいき、結果を持って再度主治医の診察を受けるという制度である。無理な設備投資をせずに専門医として開業ができるため、選ばれたものが受けた教育が無駄にならない。一般医も3年間で開業しても困らない知識を身につけられるように研修を受け、何となくだらだらと後輩が教授選に勝って居心地が悪くなるまで大学病院にいると言うこともなく、即戦力として早くから社会に出て行くことになる。専門医開業医が多いため、一般医も無理せずに専門医と協力しながら患者の診療に当たれる。とはいえ、一般医は地域ごとの当番制で当直をとらなくてはならず体力的にも大変で、数年前はインフルエンザワクチンの型がはずれて大流行しているさなかにストを決行した。

「パート2」

欲しいものだけ買う処方箋

医師の収入は原則診察料だけである。完全医薬分業であり、患者は自宅の近くの薬局で処方箋薬を買うので、使用可能な薬の中で一番良いものを常に選択することが可能で、在庫がどうこうなどと余計な心配をする必要がない。自然と最低限の処方となる。5種類の薬を処方されて薬局に行ったら、どの薬を買うかと聞かれ、日本人としては新鮮な経験ができたという例もある。患者も自宅に余っている薬が処方されれば、薬局で必要なもののみを購入することも可能なのである。

どこまでも情報開示!!

検査における情報開示も完璧である。レントゲン写真は放射線科医の所見と一緒にその場で患者に渡され、それを持って検査をオ-ダ-した医師の再診を受ける。血液検査もちゃんと患者さんの自宅にすべての結果が郵送される。検査結果をすべて自分で管理するため、主治医には内緒でセカンドオピニオンを聴きに行くことも簡単で、これは逆に医師一人一人がいい加減なことが言えないという厳しい状況も作り出している。一方、患者さんに渡されるCTの所見に癌の転移が肝臓にありますなどとかかれている事もあり、ちょっと恐ろしい制度ではある。

世界最速のドクタ-カ-?

救急医療もすばらしい。軽い患者の場合、地域の当番である一般開業医がたたき起こされ往診に出かける。この制度のため、専門医教育に入れる上位50%が一般医を選択することがほとんどないのではないかと推測する。離婚して小さい子供を引き取っている女医となると例外的に夜間の往診業務からはずされるが、これがフランス人医師の離婚率の上昇に寄与しているかどうかは定かではない。少し重い患者には、簡単な救急医療の研修を受けたSOS医師というのが往診することになる。彼らはシフト制で働いており往診専門である。オフィスを借りる必要も受付事務員もいらない究極の省エネ開業である。これよりも重症と言うことになると救急指定病院からの救急車が向かう。さらにすごいのが、今にも心肺蘇生が必要という緊急なケ-スでは、スポ-ツカ-に運転手、救急専門医、研修医の3人が乗り込み高速道路を突っ走り、その後を集中治療室と同じ設備を整えたドクタ-カ-(実際は帰りのみドクタ-カ-)が追いかけ、先についたチ-ムが蘇生を始め一段落したところで到着するという制度である。喘息患者の死亡率が日本の半分というのもうなずける。フランスは官僚が超エリ-トでしっかりしており、システムの構築がすばらしいと言われるが、問題はそのシステムの下で働く層がお気楽なことで、救急車に電話をかけても15分以上誰も出なかったというのもそう珍しいことではないと聞く。いい加減がよい加減という国でもある。

「パート3」

おしゃれな当直医

パリでは公立の救急車は指定されている6つの公立総合病院にしか患者を搬送しな
い。患者を集中させることで、昼間働いている医師が夜中に起こされて時々来る患者を診るというような必要もなく、常勤のシフト制で働く髪の毛のたっていない医師に対応してもらえる。また、バイトの研修医が一人で診るということもない。
勿論、私立病院にかかっている患者さんは契約のある私立救急車に電話すれば希望の病院で診療が受けられる。

「パート4」

「選択の自由は誰のため」

 自由診療も広く認められている。医師はセクタ-1,セクタ-2、非提携医に分かれる。公立病院はすべてセクタ-1で、開業医の大多数もセクタ-1である。彼らの外来診察料は一般医2500円、専門医3000円などのように、どのような患者でも原則定額明瞭会計である。何をやっても同じ値段である。医師にかかる前から値段は決まっており、多くの開業医はひとりで働いているので(受付も看護婦もなし)処方箋と一緒に領収書を渡し料金を受け取っておわりである。確かに時間のかかる患者さんもいるが、規定の診察料をもらうほどではない患者さんもいるので全体で見れば納得のいく料金体系と考えられているようだ。システムはシンプルなのがいいという例かもしれない。自己負担は3割ほどになるが、これも多くは普及した2次保険でカバ-される。日本でも大企業が自己負担分を返還したり、組合提携の病院にかかれば無料になるのににているが、より一般的になっている。セクタ-2の医師には研修を通常の医師より多くした場合のみなれるが、この制度はほぼ廃止の方向に進んでいるので新規のセクタ-2には通常なれない。彼らは自由に外来診察料を設定でき、保険診療の2-3倍程度を請求することが多い。この場合、公的保険からの返還はセクタ-1の医師にかかった場合と同額であるので、自己負担分がかなり増える。しかし、通常の2次保険に入っていれば公的保険のカバ-分の3-4倍の返還が受けられるので、それほど自己負担は多くはならない。非提携医も自由に診察料を設定できるが、公的保険からの返還は50円ほどで、請求の切手代がやっとである。典型的な2次保険でも200円ほどしか戻って来ないので封筒代は赤字覚悟となる。よって、経済的に余裕のある患者さんのみがかかることになる。ここで重要なことはすべての公立病院、大学病院がセクタ-1と言うことで、つまり、診察費の高い医師にかかるほうが待合室もきれいで待ち時間も短く、より丁寧に接してくれるかもしれないが、公立保険だけでも大学病院で必要な医療が必要なときにちゃんと受けられる基盤がしっかりしている。飛行機でファ-ストクラス、ビジネスクラス、エコノミ-クラスの選択権が与えられているのに似ており、医療に多くの費用を支払えばより快適なサ-ビスが得られるが、エコノミ-クラスでも出発時間も到着時間も変わらず、緊急時の対応にも差別はない。アメリカのようにお金がないからといっておいていかれたり、無理な平等が建前のためル-ルを破りの袖の下が慣例となってしまうということもない。余裕のある層が公的保険の予算を使わないおかげで、一般の人がより低費用で医療を受けられるという見方は大変ポジティブである。

「パート5」

「難病だけでない特定疾患」

 社会主義の国であるので、自己負担分にも大きな工夫がされている。必要以上に医師にかりすぎる患者に歯止めをかけるように、通常は自己負担がもうけられているが、必要性が明らかな医療行為に関してはセクタ-1で医療を受ける限り公的保険を持っていれば全額無料となる。虫垂炎の手術、糖尿病の定期的外来受診、予防接種、妊娠出産などの様に数が大変多い疾患でも、臓器移植などの1例ずつに高額な費用のかかる場合でも対象となる限りなく理想を追い続けた制度である。最低限の医療は国が責任を持って保証するという気概が感じられる。

「パート6」

「この薬本当に必要ですか?」

 逆に無駄な医療に関しては厳しく、必要以上に患者を再診に来させたと見なされた医師には、年度末に料金の返還が言い渡される。薬品に関しても、製薬会社の責任でそれぞれの薬品の現在のレベルでの効果がきちんと示されたデ-タ、論文を政府に提出することが義務づけられ、効果の証明できなかった15%ほどの薬は保険がきかなくなるとされている。効果のないと薄々わかっている薬や他国では認可されないような薬に莫大な医療費を使いすぎる悪行は続かない。日本で在庫がなくなった抗インフルエンザ薬も、症状は軽く短くなるが生命予後に影響を与えるという証拠はないため100%自己負担となり、仕入れても売れないため薬局に置いていないという日本とは違う理由で入手が困難であったが、薬の値段自体が他の先進国と比べ低く抑えられているため、決して手が届かない値段にはなっていなかった。

「パート7」

「政府の強いるIT化」

 IT化も進んでいる。数年前から政府が推し進めて現在のところ公立病院には広く普及したICカ-ドがある。国民全員に医療用ICカ-ドが配られ、医療機関でそれを機械に差し込めば患者の病歴、処方された薬などがわかるようになっており、また処方箋もカ-ドに入力するため紙は必要なく、支払いも公的保険でカバ-される分は自動的に請求されるため手間も省けるという画期的な制度である。数年前に医師がコンピュ-タ-を購入する際に、50%は国から補助が受けられるという期間があったが、最近その補助を受けた医師全員にこのICカ-ド対応の機械導入が義務づけられた。新制度普及のために練りに練っていた力業である。開業医が助かるのは年度末に郵便番号ごとに住んでいる患者を何人診察し合計いくら請求したかが表になって送られ来ることである。これを税金申告に付けて送ることになるので明朗会計で事務負担も大変軽くなる。多くの開業医はひとりで頑張っているので大変助かる。公的保険の全くきかない完全保険外診療の多い獣医の方が人気が高く、医学部入学よりも遙かに難しいというのはGDP比で日本の2倍の税金を取るフランスならではかもしれない。軽い病気のときは病院に行くが、重いときにはまず獣医さんに見てもらうのが上流階級では通例になっているというのは滑稽な作り話だが、重症の患者がいると”兄貴が獣医をしているからちょっと電話して聞いてみる”という神経内科医がいて、みんなに頼りにされているというのは笑えないジョークである。しかしながら、イギリスほど狂牛病が蔓延しなかった実力はさすがである。

「パート8」
「それでもやっぱり日本が一番」

患者にも医師にも選択肢があり、それぞれにちゃんと行きすぎがないかのチェック機構が存在する。弱者を切り捨てることなく、弱者を支えるための強者にもインセンティブをもうけている。なかなか立派な国である。ところでWHOは、以下の指標から、191カ国の順位をつけました。

(1)健康寿命:平均してどの年齢まで健康に暮らしていけるか
(2)健康寿命の地域格差
(3)患者の自主決定権や治療への満足度などの達成具合
(4)地域や人種などによる患者対応の差別の程度
(5)医療費負担の公平性

 その結果、日本は、これらの指標すべてが10位以内に入り、総合評価では、世界で一位という結果でした。2位以下はスイス、ノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルク、フランスとヨーロッパ諸国が続き、アメリカは15位でした。とはいえ、理想の結婚相手の国籍はという統計で日本人の女性が1位で日本人男性はエジプトに次で43位という統計もあり、国際的順位づけというのは理解しがたいことも多いが、女性に限れば“やっぱり日本が一番”優秀である。

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